一番美味しい「うちのだし」

自分で本当に美味しいと感じる「うちのだし」を見つけてもらいたいと思っています。

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「だし」の引き方、まるで宗教の戒律のようです。

料亭の板前・料理の本・昆布の袋の裏・義理の母。先人たちの「教え」や「ルール」はとても厳しいのです。

  • 沸かしてはいけない
  • 沸騰する前に昆布は出すべき
  • 枯れ節が荒れ節より偉い
  • カツオ節が沈んだら火を切ってすぐにこす
  • 絞ってはいけない

このような言葉の背景には、それぞれ理由があります。失敗の経験からの工夫、日本料理の伝統などの食文化、思い込み(笑)などなど。

本当に美味しいですか?

「ちゃんと」やったのにあまり美味しい「だし」が引けない。そんな経験ありませんか?

実は上のような「だしの引き方」ルールって、料理屋さんの「一番だし」の取り方です。透明に透き通ったお吸い物の、具材の淡い香りや味を引き立たせるため、あまり昆布やカツオが前に出ない上品なだし。一番最初に引く、一番上品で、一番贅沢なだし。

料理屋さんでは「1番だし」の後、「2番だし」、「3番だし」という濃いだしを出し切るため、昆布やカツオ節を沸騰させたり絞ったり煮詰めたりするんです。ご家庭でももちろん「2番だし」とりますよね?とりませんか?うちはしません。

ルールに縛られず、自分で本当に美味しいと感じる「うちのだし」を見つけてもらいたいと思っています。料亭には料亭の、家庭には家庭のやり方で。

まずは、しっかり旨みを出しきる「一番だし」を。

家庭で引く、最初で最後の「一番だし」は、昆布とカツオ節の旨みを一度にしっかりと煮出すことから。

  • 昆布を20〜30分煮る
  • カツオ節を10分煮る(アクを取る)

これだけです。細かいことで味が違いますが、まずはしっかり煮出すのが大切です。これでしっかり美味しいと思えるだしがとれます。

ただ一点、カツオ節のだしを引くときに、アクをしっかりとってください。魚くさいのはカツオのアクが原因です。火加減は、昆布はプツプツくらい、カツオ節はボコボコくらい。お好みで。

一番美味しい「うちのだし」

家庭によって使う昆布やカツオ節が違い、味の好みが違います。戒律に縛られず、自分が本当に美味しいと思える「うちのだし」が引けるように、調節してみてください。

昆布とかつお節の分量:水に対して2%前後。昆布やカツオ節の種類、味の好み、煮詰め具合などで味が違いますので、お好みで1〜4%の間で調節してみてください。

水だし:お料理を始める時、最初に昆布を水につけておき、しばらくして火をつける、その程度で十分だと思います。昆布を水でもどすと繊維が柔らかくなりだしが出やすくなるので、手間と時間が許せば、やってみてください。厚い昆布なら一晩水につけておくとしっかりだしが出ますが、薄い昆布は10分でも30分でも。

温度と昆布だし:昆布は沸騰させると煮崩れるためだしが濁りやすくなります。鍋肌からプツプツ泡が出るのが60度、と言われますが、つまりは昆布をあまり揺らさないで煮出すとだしが濁りにくいです。少々濁っても濃い旨みと昆布の香りが欲しければもっと高めの温度で煮てください。昆布の種類により、味の好みにより調節してください。

カツオ節とアク:カツオ節は沸騰させて旨みをしっかり出し、アクはくさみの原因なのでこれでもかと取ってください。沸騰させると香りが若干とび気味ですが、そのぶん旨みがしっかり出ます。

だしと保存:出来上がっただしはできるだけ早く使う・保存するなら密閉できる容器で冷蔵庫、または冷凍庫で。常温で空気に触れていると魚くさくなっていきます。

香りと旨み:うどんやお蕎麦屋さんはボッコボッコに沸かして、さらに煮詰めて濃いだしにします。昆布のくさみ?昆布の香りがすると言ってください。何かが気になるようでしたら、温度を下げてみては。

透き通っただしにするには:だしが濁るのは、煮崩れた昆布・カツオ節のアクと油・昆布とカツオ節の相性が原因です。煮崩れを防ぐには低温・長時間で煮出すこと。昆布を出した後、カツオ節を入れ、アクをしっかりとること。それでも昆布とカツオ節の相性で濁ることがあります。これは料理屋さんでも悩むことがあり、どうしようもないのです。

素材と文化 〜懐かしいと思える味〜

親しみのある味には、わけがあります。

今のようにスーパーで何でもかんでもが揃わなかった時代、地場の産物や昔ながらの運搬のルートにより食べるものが自ずと決まっており、お料理の基本であるだしの素材にも地域によって特徴がありました。

「かあさんの味」は、特徴のある地場の素材の味。広島では、真昆布といりこのだしが一般的だったと思います。甘い真昆布のだしと、ぷんといりこが香る味噌汁。一番美味しい「うちのだし」には、ぜひ地元の特産品を取り入れてみてください。

今回はサラっと、広島的なだしの素材について。

昆布:広島では昔から「真昆布」が使われてきました。昆布の流通の事情もありますが、いりこやサバ、アジ、とびうおと合わせ、甘みのある旨みの真昆布が好まれました。あまーいうどんの汁は真昆布の旨み。今度スーパーに行ったら、真昆布を試してみてください。いろいろな昆布がありますが、それはまた今度。

いりこ:どぶ(内臓)をとるかとらないか。大問題です。「内臓に旨みがある」派なら、そのまま水だしで。だしをとった後、身を食べる派なら頭・内臓・中骨を取って煮出して。新鮮な、腹が黄色くなっていないのが良いいりこ。使い切らない分は密閉して冷凍庫保存で。

カツオ節・イワシ節:荒節は燻製の香りが爽やかなすっきりした旨み。枯節は穏やかな香りでまったりした旨み。イワシ節は爽やかないりこの匂いとまったりした旨み。お料理とお好み、季節に合わせ、試してみてください。使い切らない分は、空気を抜いて密閉して冷凍庫保存で。

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